状況
法人向けキャリア面談サービスで、面談件数の増加に伴い、定性データ分析から組織向けレポート作成までの品質・工数・再現性の担保が課題になっていた。対象は面談の文字起こしや所見など定性情報が中心で、クラウド完結・ローカル保存禁止という高セキュリティ条件下での運用が前提。さらに、営業担当が企業へ提示する分析レポートは、顧客配慮や主観が混入しやすく、「客観的に何が言えるか」の基準整理も求められた。
課題
定性データの扱い方が属人化しやすい点が課題だった。発言への解釈バイアスや担当者ごとの粒度差がレポート品質を不安定にし、生成AIを使う上では情報漏洩や「それっぽい示唆」の生成も避ける必要があった。加えて、面談データは「仕事がしんどい」のような曖昧な表現を含むため、背景文脈を過剰に解釈すると誤った示唆につながる。レポートは経営・人事判断に使われるため、事実・解釈・示唆を分離し、根拠へ遡れる構造が必須だった。
解決方法
処理オペレーション側では、文字起こしを必要な文だけ抽出して軽量化し、1発言を1レコード単位で構造化して、話者・テーマ・評価区分を分けて管理する運用にした。生成AIは構造化やタグ付け、ファクトチェック補助といった「思考処理」だけに用途を限定し、人数集計など再現性が必要な処理は表計算側で担保した。分析基準側では「事実 → 解釈 → 示唆」の分離を徹底し、複数の解釈の可能性を残したまま傾向化、評価軸や尺度を事前に揃え、営業期待に寄せず客観的に読める範囲に留める方針とした。「断定しない」「代替解釈を併記する」「根拠の発言へ遡れる」という分析・プロンプトの思想を明文化し、飛躍した解釈を抑えた。
成果
定性分析業務を「人の勘」ではなく再現可能な処理フローとして整理する方向性が確立された。構造化・集計・示唆出しの責務分離が明確になり、品質基準を定義できたことが大きい。営業バイアスから分析を切り離す思想や、AIを限定的かつ安全に使う前提設計、クラウド完結のセキュア運用方針も明文化された。トライアルでは分析工数を約6分の1まで削減し、扱えるID数の制約もなくなって、属人的な分析から定量データに基づく示唆出しへと移行できた。